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もし生意気な新卒が内気なプロジェクトリーダーを論破したら??

過去に大失敗した経験って今後の人生に大きな影響を与えますよね。
当時は高い授業料だったけど、その経験のおかげで学べたことってみなさんもありませんか?

私は昔から合唱のパートリーダーや生徒会役員など代表としてなにかをする立場によく立っていました(ほとんど嫌々でしたが)。そう言ったこともあり比較的責任感は強く、より良い方法があると積極的に意見や提案、指示をするタイプです。

その性格が裏目に出てしまい、新卒時代に最初にアサインされたプロジェクトで非常にイタい経験をしました。その時のことについてお話しします。

期待のプロジェクト。のはずだったが…

アサインされたプロジェクトの内容は、今は規模が小さい将来性があると期待されていたプロダクトのデザイン刷新及び不具合改修でした。チームも非常に小さく、私とヒデキさん、それからチューター2人の計4人でした。

マネージャーの指示によりヒデキさん(仮名)をリーダーとしてプロジェクトを進め、11月リリースを目指すことになりました。

当時私はプログラミング未経験(3か月間の研修のみ)だったので、キャリアをしっかり積んで行きたかった私は期待を胸に熱心にプロジェクトに取り組みました。

進めるうちにプロジェクトチームの問題が見えるようになりました。

当初はチューターによるOJTを前提としてプロジェクトを進めるはずだったが掛け持ちしていたプロジェクトが忙しく、実質二人でプロジェクトを進めていかなければならなくなりました。

(この会社大丈夫か…?)

こんな状態になってしまった以上私とヒデキさんで協力してなんとか乗り越えていかなければなりませんでした。そこで私は積極的にコミュニケーションを取っていくことが重要だ、そのためにもヒデキさんのことを知らなければと思い、今後の仕事の進め方についてヒデキさんと話し合いをすることにしました。

その結果いくつか方針を設けることにしました。

・効率を上げるためそれぞれの得意なことを担当する
・毎朝のルーティーンとして朝一にお互いの進捗状況と課題について報告する(今で言うスクラム)

どうやらヒデキさんはプログラミングが得意ではなく、管理業務やデザイン提案のほうができるということでしたのでその手の仕事はヒデキさん、実装業務は私がメインで担当することに決めました。

また、ヒデキさんは私とは真逆の性格で、内気で指示されたことはやるが自ら考えて行動するのは苦手みたい。リーダー経験に乏しいのか、正直あまりリーダーの能力を兼ね備えている感じがしませんでした。

(うまくやっていけるだろうか…??)

そんな不安がよぎりながらもうまくいけばいいなと願っていた矢先に事件のきっかけとなる出来事が起こりました。

マネージャーからの急な追加要望

プロジェクトを始めて1か月経過したある日、マネージャーから追加要望が出されました。

「ついでだから今要望として挙がっている機能も全部対応しといて。どれも簡単なものばかりだから」

しかしプログラミング未経験の私にとってはどれも重いタスクで、しかもこの時点ですでにプロジェクトが遅延していました。それなのに引き受けるのは危険だと感じました。また、どれもプロジェクトの目的と直結する機能ではなさそうだったのでおそらく別の機会でも問題はないかもしれません。
対応するにしても数を絞る、少なくともスケジュールを調整するので少し時間をもらうべきだと主張しようとしました。

ところが私が発言する前にヒデキさんは

「承知いたしました。すべて対応いたします。」

とその場で約束してしまいました。

…えっ?

完全に言葉を失ってしまいましたが、何か考えがあるのかと思い、マネージャーとの話し合いが終わった後になぜあの要求を受け入れたのか聞きました。するとヒデキさんから返ってきた答えは予想を裏切るものでした。

「マネージャーがそう言ったから…」

この時私は、ヒデキさんは承認欲求で動いており、マネージャーからの期待にすべて応えようとしているのだと悟りました。今までの経験から、これでは目的がずれて要求に翻弄されてしまい、最終的にプロジェクトが失敗する未来が容易に想像できました。

さすがにこれはまずいと判断したため、ヒデキさんには答えるときはしっかり考えてからしようと提言しました。しかし、ヒデキさんの意見は

「いや、マネージャーの言うことは聞かないとだめだよ」

(うーん…)

まぁリーダーはヒデキさんだからあまり干渉しすぎるのはよくないな、可能な限りリーダーを支援することに集中する方向でいこうと考え直しました。

しかしついに事件は起こってしまいます。

Yesマンのリーダーと口論、そして…

あれから3週間たち、9月中旬。進捗状況は悪化をたどる一方でした。

リソースが増えずにタスクだけ増える。しかも二人の技術力不足なこともあり、残業の機会は増えていく。少しずつチームの空気が悪くなっているのを感じていました。

私は過度な残業はかえって作業効率を下げるのを知っていたので、残業は2時間ほどで済ませる代わりに仕事終わりに自己研鑽をするようにしました。おかげで少しずつ作業効率は上がってきました。

一方ヒデキさんはほぼ毎日のように夜10時ごろまで残業を続け、1日13時間近く働いていました。疲れ切っているのは私の目から見ても明らかでした。早く帰って休むように何度か進めましたが、それでも9時近くまで残って仕事を続けていました。

9月が終わろうとするころ、それでも予定していたスケジュール通りには進まず、少しずつ遅れが目立ってきました。私たちはこのままではいけないということで朝の時間を使って話し合いをする機会を設けました。

本気でスケジュールについてしっかり見直すのかと思い、いろいろ頭を巡らせていましたが、リーダーのヒデキさんから出た言葉は全くもって違いました。

「悪いけどもっと残業してもらえないかな?」

……はい⁉

できないことがわかっているのにYesとこたえ、自ら首をしめていく行為を続ける姿に私はついに痺れを切らしました。

「今回のプロジェクトで期待されていたことは、少しでも早く時代遅れになっていたUIをモダンなデザインにすることで印象を改善して新規ユーザー登録を増やすことですよね?スケジュールもカツカツなのもわかってたはずです。にもかかわらず追加タスクを引き受けて、スケジュール調整もせずに残業でカバーって…それはおかしいですよね!?
それに遅れているのは私よりヒデキさんのタスクですよね?それなのに私に残業を求めるってどうなんですか?少なくとも今話すべきことはスケジュールをどう調整するかだと思います。」

内気なヒデキさんは完全に圧倒されてしまいました。私自身もやや脅迫気味だったことは自覚していましたが、間違ったことは言っているとは1ミリも思ってませんでした。

(あんなんリーダーとして不適任やろ…‼)

結局その後はチューターの方々にもお忙しい中協力いただきスケジュールの見直しを行いました。そしてスケジュールは変えないものの、リリース対象の機能を減らす方向で進めることにマネージャーに持ち掛け、なんとかタスクの調整ができました。チューターにお世話になった数少ない支援の一つです。

その日から私は打ち合わせをするたびにヒデキさんの決定に対して意見を言うようになりました。

「この機能はそこまで優先度は高くないと思います。それよりも先にUIを決定したほうがいいですね。」

「この進捗報告じゃマネージャーは何も理解できないと思います。このように書いたほうがいいです。」

「自分たちの意見の整理もしてないのにマネージャーに何を聞きにいくんですか?案をいくつか用意して聞きにいかないと意味ないですよ。」

このようにしてヒデキさんに伝えることで論理的思考やリーダーシップの方法を学んでもらいプロジェクトを正そうとしました。

その結果…

プロジェクトリーダーがしゃべらなくなりました。

どうやら何を言っても完全に反論されてしまうので完全に自信喪失してしまったようです。

毎朝のルーティーンも完全に裏目に出てしまい、さらにギクシャクすることに。私もそれがストレスとなり仕事のパフォーマンスが低下していきました。11月リリースの予定でしたが、予定日になっても全体の半分近くしか進んでおらずますます空気が悪くなっていく…

これを見たマネージャーはようやくフォローに入り、急遽ほかのメンバーを増員することに。その人が私たちの仲介役を買ってくれたおかげで少しずつ改善されていき、何とかリリースできました。

とはいえ予定よりも3か月の遅延、9人月分のコスト、挙句の果てにはデグレードの発生とプロジェクト評価は散々。非常に納得いかない結果となりました。

正しいことを伝えただけなのに…

プロジェクトが終了した後、なぜこうなってしまったのか考えることにしました。

私の当時の主張はこうでした。

・リーダーは成功に向けてメンバーを導く役割がある
・そのためには正しい判断を下し、自らが率先して行動を起こさなくてはならない
・にもかかわらずリーダーとしての役目を全然果たしていない
・それどころか悪い判断を繰り返してプロジェクトを崩壊させようとしている
・私はこれ以上プロジェクトが悪化しないために正しいことを言ってきたはずだ

しかし私にも大きな問題があることは何となく途中から気づいてはいました。自分の行動を可能な限り客観的に分析したところ、私の言動はヒデキさん(やほかの人)にはこのように見えていたのかもしれません。

・私はヒデキさんに自らのリーダーシップを押し付けようとしている
・私はヒデキさんがリーダーの役割を果たしていないと主張しているが、私もメンバーの役割を果たしていない
・私は文句ばっかり言っていてヒデキさんを困らせている。実際に態度が非協力的だ

つまり、私はあるべき姿についてずっと注意を払ってコミュニケーションをとっていましたが、相手の立場を考えて受け入れられるコミュニケーションをしてきていなかったのです。

結局のところ私の最大の問題は「伝え方」にあったということです。

「何が正しいか」よりも「どう伝えるか」

ソフトウェア開発のみならず、人が関わっている以上コミュニケーションはプロジェクトの成功において非常に重要な要素です。

書籍「デッドライン」や「ピープルウェア」でも成功の秘訣としてソフトの面が重要であると主張してありますが、今回プロジェクトが大失敗に終わったことで、私は「何が正しいか」よりも「どう伝えるか」がコミュニケーションにおいて重要であるということを初めて実感しました。

当時のプロジェクト関係者には多大な迷惑をかけてしまいましたが、終わった後は大きな恨みつらみが残ることなく、通常通りに会話ができたのは非常にありがたい限りでした。

このプロジェクトでの過ちは二度と繰り返さないと心に決め、今でもコミュニケーションをとる際は細心の注意を払うようにしています。

あなたのプロジェクトではどうでしょう?チーム内でぎくしゃくした関係はありませんか?
もし心当たりがあるようでしたら、一度自分の主張を相手にどう伝えているのか見直してみてはいかがでしょうか?